今回も民事信託 (家族信託) から離れ、前回ご紹介した『遺言で何ができるのか』、『何をしておいた方が良いのか』に続き、『遺言の必要性』について具体例をあげてご紹介したいと思います。
◇ 具体的な例をもとに遺言の必要性を考えてみましょう
下記は、子どもがいないご夫婦2人家族の例です。遺言書を作成する必要性はどんなところにあるのでしょうか。
例:『ご夫婦2人で子供がいないケース』
上記の例において、もし妻よりも夫が先に亡くなった場合、夫の相続人は妻だけでなく、存命の夫の親(母)も相続人となります。また、夫の親(母)が先に亡くなっていた場合の夫の相続権は、妻と、夫の兄弟姉妹となります。
もし夫の兄弟姉妹が、夫の相続人となる場合は遺留分請求の権利はありませんが、母(夫の親)が相続人の場合は、遺留分侵害額請求権があります。
考えられる問題点とは?
普段から、妻と、夫の親や兄弟姉妹の関係が良好である場合は、夫の相続手続きにも協力的かもしれませんが、万が一、仲が悪ければ、協力してもらえない可能性があります。
最悪の場合、母(夫の親)には遺留分侵害額請求権があるため、夫の財産分割に納得してもらえなければ、夫の相続財産をめぐって裁判になる可能性もあり、妻の相続手続きの負担が大きくなる可能性がさまざま考えられます。
他にも、夫の両親や兄弟姉妹が疎遠であったり、海外など遠方に住んでいる場合は、連絡を取ること自体も難しく、その点から考えても、夫が先に亡くなると妻の負担が大きくなる可能性が充分に考えられます。
解決策としての遺言の活用
夫が生前に作成する遺言に、「全ての財産は、妻に相続させる」「遺言執行者は妻とする」等を記載しておくと良いでしょう。
このような遺言があることで、夫が亡くなった際、妻が相続手続きを進めていくことになり、手続きに印鑑等が必要な場合でも「夫の遺言=夫の意志」として示せるので、夫の親や兄弟姉妹に必要な印鑑などをもらいやすくなるでしょう。
また、遺言執行者として妻が手続きを行なえるため、自宅などの不動産の名義変更や銀行預貯金の解約などを妻だけの手続で行うことができるようになります。
遺言の必要性とは
例のような場合には、「遺言」がある事で相続人が手続きをしやすくなったり、相続人間のトラブルの回避につながるといったメリットがあります。
もちろん、遺言には、遺言者の意志を遺すことが出来るという大きなメリットもありますが、もし遺言がなかった場合の想像すると、残された相続人間の手続き、特に上記の例では「妻」にとって、手続きの負担が軽減できる点こそが最も重要な遺言の必要性だと考えられます。
上記の例以外でも、遺言の必要性があるご家族はたくさんあります。
もしまだ遺言を準備できていない方は、早めにご検討ください。
遺言を検討される場合は、専門家へご相談ください!
遺言を作成する場合は、専門家へ一度相談頂くことをおすすめします。
ご自身の遺したい内容が遺言の内容にしっかり反映しているか、書き方に不備はないかなど、遺言書自体を確認してもらうことで、相続手続き時に確実な内容の遺言を残すことができるためです。
また、専門家に相談することで、自身では思いもよらないことが見えることもあります。ご自身は、相続人間の手続が円滑にいくと思っていても、いざ相続が発生すると大きなもめごとになってしまう場合もあります。
専門家の視点で助言をもらえれば、予めもめごとを防ぎ、円滑な相続手続きができるよう備えることが出来ますので、是非ご検討ください。
お悩みの方は、当事務所へお気軽にご連絡ください!
(※紛争性が高い場合は、当事務所ですべてを対応することが難しい場合があります。予めご了承ください。)