前回に続いて、民事信託(家族信託)の活用例についてご紹介します。
今回は、家族に認知症を発生している方がいる場合や、将来に備えて対策を検討されている方に役立つ活用を具体的にお伝えしたいと思います。
民事信託(家族信託)活用例~認知症②~
夫Xと妻Yには、近くに住む長女Aと遠方に住む長男Bの2人の子がいます。
数年前、妻Yが認知症を発症し、夫Xと近くに住む長女Aがサポートしながら暮らしています。
夫Xとしては、妻Yが自宅をとても気に入っているため、自分が先に亡くなったとしても妻Yができるだけ長く自宅に住めるように、今後も長女Aに手伝ってもらいたいと考えています。
一方、遠方に住む長男Bは、認知症を発症していると銀行口座の凍結したり、不動産の売却などの手続きが難しいと聞き、将来、両親の生活費や医療費などが足りなくなるのではないかと心配しています。
長男Bは、万が一に備えて、早めに実家を売却し、売却資金を両親の老後資金のために備えておくが良いのではないかと考えていることが分かりました。
もし何も対策をしなければ長男Bの考えのとおりに自宅を売却することになりそうです。
夫Xの死後に、妻Yができるだけ自宅に住めるような対策はないでしょうか?
解決策 民事信託(家族信託)を活用しましょう!
夫Xを「委託者 兼 受益者」、長女Aを「受託者」とする民事信託(家族信託)を活用します。
当初は、夫Xに代わり、受託者である長女Aが自宅を管理します。
もし夫Xが先に亡くなった時には、受益者を夫Xから妻Yに代わるようにします。妻Yが受益者になることで、受託者の長女Aの管理のもと、妻Yは自宅を売却せずに、可能な限り自宅に住み続けることができるようになります。
ただし、受託者である長女Aは、妻Yの医療費や施設入居の費用のために資金が必要な場合や、施設に転居して自宅が空き家になった場合などに、認知症の妻Yに代わって自宅の売却手続きをすることもできます。
つまり、長男Bが心配していた両親の医療費などの資金が足りなくなってしまった時にも民事信託(家族信託)で備えることができます。
さらに、長女Aと長男Bを帰属権利者に設定しておくことで、夫Xと妻Yの死後、兄弟2人の任意のタイミングで自宅を売却することも可能になります。
まとめ
今回の内容は、「遺言代用信託」と呼ばれるもので、遺言と同様の機能を持つ、民事信託(家族信託)です。
遺言だけでは、「妻Yが出来る限り自宅に住み、やむを得ない場合だけ売却してほしい」といった内容を書いたとしても、夫Xの要望やメッセージとなってしまい、法的効力を持たせることが難しいです。
そこで民事信託(家族信託)を活用することで、受託者である長女Aによって、委託者である夫Xの希望に応じた管理や、必要に応じた自宅の売却も可能となるため、遺言書だけではカバーできない部分に対応することができます。
このほか、本人が(認知症などを理由に)遺言書を書けない場合も民事信託(家族信託)が有効になる場合があります。
民事信託(家族信託)を検討される場合は、まずは詳しい専門家に一度ご相談ください。
もし身近な専門家がいらっしゃらないときは、当事務所でもご相談をお受けしておりますので、お気軽にご相談ください♪
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