シリーズで連載させていただいている「民事信託(家族信託)」ですが、3回目になる今回は、相続発生前後の信託のメリットについて解説いたします。
民事信託(家族信託)の活用でどう変わる?
民事信託(家族信託)を活用してみたいけれど、財産を受託者に託した場合、
”贈与税や不動産取得税はどうなるのか?”
”信託活用後に相続が発生した場合の相続税はどうなるのか?”について気になっている方も多いと思います。
そこで今回は、信託を活用しない場合とした場合でどう変わるのかを比較しながら解説したいと思います。
民事信託(家族信託)を活用すると、≪贈与税・不動産取得税≫はどうなる?
■民事信託(家族信託)を活用しない場合
民事信託 (家族信託) を活用しない場合は、不動産(自宅や収益物件)の所有権の名義を親から子に移す場合は贈与となり、子が贈与税や不動産取得税を負担することになります。
■民事信託(家族信託)を活用する場合
民事信託(家族信託)を活用する場合は、前回の記事でもご紹介した実例(左記の例①)のように、「委託者」兼「受益者」である親が所有する不動産(収益物件や自宅)を、「受託者」である子に託します。
「受託者」の子は親に代わって、信託した不動産の管理や運用、処分(売却や建物の解体)を行います。
このとき不動産の名義は「受託者」である子に移りますが、不動産の家賃等を「受益者」である親が受取っているため、「受託者」である子が贈与税や不動産取得税を負担することはありません。
民事信託(家族信託)組成後に相続発生したら、≪相続税≫はどうなる?
■民事信託(家族信託)を活用しない場合
一般的に相続が発生した場合、例えば、親の相続が発生すると相続人である子が、親から引き継いだ財産に応じた相続税を負担することになります。
■民事信託(家族信託)を活用した場合
相続税については、民事信託(家族信託)を組成した後も同様です。
つまり、受益者(親)の相続が発生した場合、受益者(親)の持つ権利(受益権≒不動産の価値)を相続した子ども等が相続税を負担します。しかし、民事信託を活用することによって、子どもが親に代わり財産の管理処分を行い、資産活用や財産の種類を変更できるようになります。
その結果、民事信託を通じて、相続税対策を継続できる状況を作り出すことができるというイメージになります。
民事信託(家族信託)の活用によるメリットとは?
≪贈与税≫や≪相続税≫からみたメリットとは?
民事信託(家族信託)を利用した場合は、贈与にはならず、相続時に相続税がかかります。
従って、信託を活用せずにただ単に生前贈与をして贈与税がかかる場合と比べると、結果的に負担する税率が低くなる場合が多くなると言えます。信託内容にもよりますが、その点がメリットになる場合もあるでしょう。
税金に関するご相談は、税理士等の専門家にご相談いただき、将来の財産活用について入念な検討が必要です。
≪現金≫を信託した場合のメリットは?
相続前に現金を信託した場合も、不動産における取り扱いと同様となります。
例えば、親が疾病や認知症になって判断能力を失った際、銀行口座が凍結されて親の預金を口座から引き出すのが困難になる場合があることは身近で聞いたことがあるかもしれません。
その場合でも、予め現金を信託していれば、子どもが受託者としてその現金を管理しているため、口座を凍結される心配がなくなります。
このように民事信託(家族信託)を活用することで、受託者である子どもの管理のもと、継続して親の現金を親の生活費や療養費、または交際費等のために使用し続けることが可能となります。
また、相続発生後も、受託者の子どもがお金を管理する状況が継続しているので、死亡による口座凍結の心配もありません。
したがって、信託した現金があれば、葬儀費用や債務弁済にもスムーズに対応をすることができます。
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民事信託はご家族の構成や財産の種類、将来のご希望等によってオーダーメイドする仕組みです。
詳しくは、民事信託を取り扱う司法書士・弁護士等の専門家にお声掛けください。