前回までも様々な場合に応じた民事信託(家族信託)の活用についてお伝えしてきましたが、今回からは会社の経営者の方向けに、事業承継に関わった信託の活用例についてご紹介します。
信託事例~自社株式の承継と指図権の行使~
現在、会社を経営する父Aと、後継者の長男Bがいます。
父Aは、将来、急に体調が悪くなった時や万が一、認知症を発症した時などに備えて、早めに会社を承継しなければならないと分かってはいるものの、自分が元気なうちは経営を続けたいという思いもあり、事業承継を進められずにいます。
また、長男Bはいきなり会社の経営を担うことや、会社を継ぐときの自社株式の取得による贈与税負担について心配しています。今後も父Aに教わりながら徐々に会社を承継していく方法がないかと悩んでいます。
~父Aの悩み~
早く事業承継しなければと思いながらも、元気なうちは経営を続けたいという思いから、事業承継が勧められていない。
~ 長男Bの悩み~
会社の承継に自信が持てず、贈与税負担も大きいので事業の受け継ぎに少し躊躇している。
解決 指図権を設定した自社株信託を活用しましょう!
父Aと長男Bが円滑に事業承継できるよう、自社株式を信託する民事信託(家族信託)を活用した解決策をご紹介します。
上の図のように、父Aは自社株式を信託して配当等を受取る「委託者 兼 受益者」となります。
長男Bは、信託した自社株式を委託者の父に代わって管理等する「受託者」となります。
加えて、受託者の管理等に指図権を行使できる「指図人」の役割を父Aが行います。
これにより、自社株式の名義は受託者である長男Bに変更されますが、父Aが元気なうちは「指図人」として指図権を行使できるため、父Aは会社の経営に参加し続けることができます。
万が一、父Aが体調不良になってしまった場合は、父Aは指図権は行使せず、受託者である長男Bが会社の議決権を行使します。
このように民事信託(家族信託)を活用することで、父Aが元気なうちは会社の経営を続けることができ、また承継する時は信託契約に基づいてスムーズに長男Bに承継することが可能となります。
自社株信託は贈与にならないの? → 委託者と受益者が同一(父A)のため贈与にはなりません
上記の例のように、「委託者」と「受益者」が父Aに設定された状態で、自社株式を信託財産にすることは贈与にはあたりません。
そのため、長男Bは贈与税の負担はなく、父Aの死亡時に相続税で対応すれば良いということになります。(贈与税に比べ税率が有利になるケースも多いでしょう。)
まとめ
経営者の体調不良などにより事業が滞ってしまうと、社員や取引先にまで影響が出る可能性があるため、事業承継は早めの対策が特に重要です。
上記の例のように、民事信託(家族信託)の活用が有効的な場合も多いので、ぜひご活用ください。
ご興味のある方は詳しい専門家によくご相談の上、民事信託(家族信託)を活用されることをおすすめします。
もし身近に専門家がいらっしゃらない場合は、当所でも相談をお受けしておりますので、お気軽にご相談ください。
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