民事信託(家族信託)は、将来の認知症などの対策だけでなく、会社経営の相続対策などさまざまな状況下で活用することが可能です。
そこで、今回からは、民事信託(家族信託)の活用を具体的な事例に基づいてご紹介したいと思います。
【事例】院長の悩み:将来、『妻→長男』とクリニックを継がせたい
とある病院の院長が、家族や病院の後継について以下のように悩んでいます。
~院長の悩み~
私は、医療法人の院長をしています。
クリニックの土地・建物は私が個人で所有し、医療法人に賃貸しています。
70代になり、次の世代のことを考えるようになりました。
私が亡くなった後、クリニックの土地・建物は、
”妻に相続させ、妻が賃料で生活できるようにしたい。(図①)”
その後、”妻が亡くなったら、後継者の長男に相続させたい。(図②)”
今後の将来像を描くためにも、「妻→長男」の道筋を作っておきたいのですが、何か良い方法はないでしょうか?
【解決】民事信託 (家族信託)による解決
【民事信託 (家族信託) の流れ】
(1) 院長(委託者)が長男(受託者)にクリニックの土地と建物及び現金を信託する。
土地と建物の名義は長男(受託者)になるが、贈与税、不動産取得税は発生しない。
(2) 長男(受託者)は院長(委託者)に代わって、クリニックの土地と建物を管理する。
※長男(受託者)は、医療法人から賃料を受取ることも可能です。
(3) 長男(受託者)は、院長(受益者)に金銭(賃料)を給付する。
(4) 院長が亡くなった後は、妻が金銭(賃料)を受取る。
(5) 院長、妻両名の死亡により信託が終了し、残った財産が長男(帰属権利者)に帰属する。
まとめ
民事信託(家族信託)を活用することにより、医療法人からの賃料は、院長が存命中は院長に、院長死亡後は妻に、妻死亡後は長男が受取ることができ、贈与税も発生することなく院長の希望する内容が実現可能となります。
(相続税は、民事信託(家族信託)の活用の有無に関わらず、相続発生時に引き継いだ財産に応じて負担します。)
また、長女へ特定の財産を遺したい場合は、民事信託(家族信託)で長女も帰属権利者に指定する方法だけではなく、遺言書や生命保険を活用するなどさまざまな方法が考えられます。
民事信託(家族信託)にプラスして遺言書の活用なども含めた幅広い対策から、ご家族や財産の状況に合った最適な対策を検討しましょう!ご興味のある方は、民事信託(家族信託)に詳しい専門家・士業等へご相談ください。