日本の65歳以上の人口が総人口に占める割合は約27.3%(内閣府の平成29年版高齢白書)になっており、平成24年度の時点で認知症高齢者の有病者数は462万人にものぼると厚生労働省が推計しています。
2040年には高齢化率が約35%になるともいわれている中で、認知症等に罹患する方は今後も増加していくものと考えられています。
そんな中、不動産の処分を含めどのような契約手続きも厳格な本人確認や意思確認が徹底されつつあります。
昔は子供が高齢の親の代わりに手続きをしていれば、なんとかできたと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ですがそれは過去の話で、今はしっかりとした委任契約等がなければ処理できないものです。
それはどういうことなのでしょうか。
認知症等になってしまうと子ども等に対する委任契約すら成立しない
本人に判断能力がない場合、それを悪用できる状況すら許さない、本人の権利を保護する民法上の法制度は素晴らしいものです。
しかし、認知症等になってしまうと子供等に対する委任契約すら成立しなくなるため、上記のように代わりに契約や手続きができなくなってしまうわけです。
そうなった場合の本人の権利を保護する制度「成年後見人制度」をご説明します。
成年後見人制度を利用すれば人の権利を保護しながら契約や手続きができる
そこで認知症や知的障がい・精神障がいや意識不明の状態に陥った状況を保護するため、成年後見制度等の法整備がなされています。
成年後見人制度を利用する場合は家庭裁判所に申し立てを行い、成年後見人等が選任されれば、第三者として本人の法律行為につき意思の補完・代理をして、本人の権利を保護しながら契約や手続きができます。
ただ、なんでも本人の代わりに手続きができるわけではない
成年後見人であっても、本人の居住用不動産を処分するときは、家庭裁判所の許可を得る必要があり、許可のない売却・賃貸・抵当権の設定等の行為は無効となると定められています。
(民法859条の3)
自分が任せたい人以外が財産管理、処分をする可能性がある
判断能力が低下した本人に代わって財産の管理や身上監護を行う制度で認知症発症後や死亡後の財産管理や相続対策はほぼできません。
成年後見人を裁判所が選ぶので、自分が任せたい人以外が財産管理、処分をする可能性があります
まとめ
認知症なったら、親の住んでいる自宅を売って、そのお金で施設に入りたい(入れてあげたい)という要望をお聞きすることも多いです。
しかしながら、上記の通り、それではその思いが叶わないことも実際に多いものです。
元気なうちに相談いただければ家族信託を組んでおくなどの対応ができることもあります。
「もしも」は「いつ」やってくるか分かりませんので、ご家族で相談の上、専門家と一緒に検討をされてはいかがでしょうか。